私は昔本屋で働いていた。学生だったので、就職先にありつけた私はその仕事を辞めた。

私が退職する時、同僚の一人がなぜか岡村靖幸の「OH!ベスト」をくれた。「社会に出て辛い事があったらこれを聞くんだよ」という一言を添えて。

岡村ちゃんが3度目の逮捕をされた1か月後の出来事だった。

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なお私は、それまでこの同僚に対して1回も岡村ちゃんが好きとか言った事は無いし、なんだったら、同僚の方が岡村ちゃんの歌詞がすごいとか、当時のPV見てて子供ながらに、「大人になったらあんなゴリゴリに肩パッド入った服着なきゃいけないと思って憂鬱だった」とか言ってた。たぶん彼なりの賞賛だったんだと思う。ある意味自分が好きな物をくれたんだと思う。

 

社会人になったら想像よりつまんない仕事との戦いの日々だったので、割とすぐに辛くなった。

だから言われた通りにもらったCDを聴いた。(言われたことや、アドバイスはわりと素直に聞く人間なので)

マンションの発音が限りなく「”メ”ンション」な所とかがすっごい新鮮で、面白いし歌うまいし、気になってPVをYoutubeで見てみたら、肩パットとか凄いし、私は何回も何回もそのアルバムを聴いたり、PVを見たりして結果なんかすごく元気になって、なおかつ仕事を辞める勇気も出た。岡村ちゃんの事も好きになっていた。

そして私は最初に入った会社を辞めた。

 

そこからさらに月日が流れて、私は自分がやりたい様な事も少しはさせてもらえる会社に運よく潜り込んでいた。

私が、退職の時に岡村ちゃんのCDを貰って、それがきっかけで岡村ちゃんも好きになったし、会社も辞める元気が出たエピソードは割といい話として色んなひとに話していた。CDをくれた同僚とはそれから会ってなかったけど、常々会いたいとは思っていた。

 

そして仕事は全く関係ないけど、ここ1年くらいよく遊んでくれる友達がいて、その人が都内のお寺を借りて開催されるLIVEイベントのスタッフをしてるというのをずっと聞いてた。先日そのイベントに行ってみた。

 

お寺の本堂がライブ会場になっていて、会場である本堂に入ったらCDをくれた元同僚にそっくりな人がいた。

最後に会ってから8年は経っているのでもう少し見た目変わってたほうが自然だと思うのだが、全然変わってない元同僚がそこにはいた。仙人かよ

 

あまりに突然の出来事にドッペルゲンガ―の可能性も考慮して、スタッフをしている友人に聞いてみたところ、どうやら間違いなく元同僚だということを確信した。

その友人にも、私がCDもらった話をしたことがあったので、前に話た私の元同僚とは彼の事だと伝えた。友人は「うわぁ~~~」と言って私よりびっくりしていた。

 

 LIVE終了後、感動の対面をしようと話かけた。8年ぶりの予期せぬ再会だ。私は上がるテンションを押さえ「ご無沙汰してます…あの○○(本屋名)でお世話になった…」とボソボソ話しかけたら

 

「あ、ひさしぶり~!どうしたの~?」とすっごく軽く言われた。

リアクションうすっ!感動ゼロかよ!!

感動の再会の予定だったが、相手のペースに完全に飲まれてすごくゆるい感じでお互い8年分の出来事をダイジェストで話た。

そして、忘れていた凄く大切な事を思い出した。

 

この人と話すと、いつもこの人のペースに飲まれる事。

私は割と色々考えすぎてピリピリしやすい性質なのだが、この元同僚は全く逆で基本肩の力が抜けている。良くも悪くも力むことがない人だった。

その態度が適当だとか、怒る人もいた。私も同僚時代彼に対してしっかりしろよ!とか、もう少しちゃんとやろうぜ!とか思うことが無かったわけじゃないけど、いつも彼と話してると、なんとなくそれで良いような気になってしまっていた。

話しているうちに、彼のペースに飲まれていってるだけなのだが、ピリピリしがちな私にとってそれは、凄く気が楽になる時間だった。

 

ずっと会いたいと思ってたのは、CDのお礼が言いたかった訳でも、岡村ちゃんの話をしたかった訳でもなくて、彼のペースに飲まれる感じをまた味わいたかったんだ。

なんの話をしても、煙に巻かれてしまう胡散臭い仙人と話すのはこんな感じなんだろうか。色々伝えたいことはあったはずなのに、些末な事は煙に巻かれて「会えてうれしかった」くらいしか言えなかった。

 

仙人とは連絡先も交換せずに別れた。たまたま会える方が仙人っぽいと今なら思うけど。本当は仙人との会話で煙に巻かれて言い出せなかっただけだと思う。

 

自分でも気づいていなかったけど本当はずっと会いたかった、胡散臭い仙人に東京のお寺で会った。

 

また何処かで会いたい。

街角?居酒屋?どこで会えるか解らないけど、私がしんどい時にはまた出てきてほしい。そしてまた私を煙に巻いて欲しい。